傷ついた王子は森の魔女に癒される
 必死に状況を把握しようとしていると、宙に浮いたガラス玉がふわふわと視界に入ってきた。

「っ……!」

 青い炎を見た瞬間、本のページを高速でめくるかのように、これまで見てきた光景が頭の中で次々と繰り広げられた。


「……ああ、僕は……」


 リリアナに会いに来たんだった――。


 ガラス玉の中で燃える炎は明らかに小さくなっていた。
 記憶が消え去る前に、早くリリアナに感謝を伝えなければ――!

「……リリアナ。……会いたかった」
「――!」

 びくりとリリアナの肩が跳ねる。目を見開いたまま凍りつく。
 でもすぐにはっとした顔になると何度も首を振った。ミルクティー色の髪が乱れる。

「ファリエルさん、追い出したりなんかして本当にごめんなさい! 私――」

 必死に訴えてくる唇の前に人差し指を立てて、言葉を遮った。
 まばたきの増えたリリアナの目を覗き込む。濡れたアクアブルーの瞳は、いつまでも見ていたいくらいにきれいだった。

「……僕は、最期(・・)の挨拶に来たんだ」
「さいご……ですか……? ファリエルさん、どこかへ行ってしまうの……?」

 眉尻を下げたリリアナが、か細い声で問いかけてくる。
 寂しげな表情が胸に刺さる。そうじゃない、と首を振ってみせる。
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