傷ついた王子は森の魔女に癒される
「僕は、君の元から去ったあとに魔獣と遭遇して大怪我をしてしまってね。コーデリア嬢に助けてもらったんだ」
「コーデリアさんが、ファリエルさんを……」
「ああ。それで、恩返しとして……僕の命を彼女に捧げることにしたんだ」
「コーデリアさんに命を捧げる!? どういうことですか!?」

 叫び声が森にこだまする。目を見開いたリリアナが一歩迫ってきた。
 驚くのも無理もない。ファリエルは一度深呼吸すると、冷静さを装いながら説明を続けた。

「彼女の作った記憶を消す薬を飲み、記憶をなくした上で殺されるんだ」
「そんな……ウソですそんなの! コーデリアさんがそんなことするはずが……」
「本当だ。実はもう、その薬は飲んでしまったんだ。『最期にリリアナに会いたい』と言ったら、『先に飲まなければ許さない』と……」

 リリアナがまるで「信じたくない」とでも言うように首を振る。
 その拍子に、ファリエルの後方から視界に入ってきたガラス玉がふたりの間をさえぎった。中の炎はすっかり小さくなっている。ファリエルは、ガラス玉の下に手を添える風にして青い炎を指し示した。

「……その代わり、リリアナに会うまでには薬の効果が出ないように発動を遅らせてくれたんだ。この炎が消えたら……僕の記憶は消える」
「炎が消えた瞬間、全部忘れてしまうの……?」
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