傷ついた王子は森の魔女に癒される
「記憶、何度か消えかけたでしょ?」
「あ、ああ」
「だったらちゃんと効いてるから安心なさい」

 言葉とは裏腹に、その表情は冷ややかだった。
 ため息を吐き捨て、すぐに視線を戻す。

「あんたはせいぜい長生きするといいわ。リリアナを泣かせたら、本気で殺しに来るから覚えておきなさい」
「ああ。決して悲しませるような真似はしないと誓う」
「誓う相手は私じゃないでしょ。邪魔者は消えるわ、じゃあね」

 コーデリアはぷいっと顔を背けると、ほうきにまたがり宙を滑るように去っていった。



 魔女の森に、そよ風が吹き抜けていく。
 木々のざわめきさえ、信じられないことが起きたあとではまるで歓声のようにも聞こえた。


 僕は彼女の薬で――コーデリア嬢の計らいで――魔女並みの(・・・・・)寿命を得た(・・・・・)


 リリアナと、これからずっと一緒に居られるんだ……!


 目の奥が熱くなる。
 ファリエルはまばたきで涙を抑え込むと、リリアナの前にひざまずいた。
 左手を胸に置き、右手を差し伸べる。

「リリアナ。僕と……」
「――待ってください」

 すかさず言葉を被せられる。
 ファリエルが驚きに固まった瞬間、リリアナが切なげに眉をひそめた。

「先に、謝らせてください」
「……!」
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