傷ついた王子は森の魔女に癒される
 切実さのにじむ声。浮かれかけた心が瞬時に引き締まる。無言で立ち上がり、揺れる瞳を覗き込む。
 するとリリアナが髪を振り乱しながら勢いよく頭を下げた。

「ファリエルさん、あなたのことを追い出してしまって本当にごめんなさい!」

 顔を上げたリリアナの目には涙が浮かんでいた。

「あなたの処刑の原因を作った私に、一緒にいる資格なんてないと思ったから……」
「君のせいじゃない。いずれにせよ僕は、なにかしらの策略に嵌められたと思う。なにせ近しい人間の悪意さえ見抜けなかったのだから」
「でも……」

 まだなにか言いたげなリリアナの手を強引に拾い上げる。
 その手首に巻かれた、ユリ柄の編み込まれたお守り。
 指先でそっとなぞりながら、微笑んでみせる。

「それよりも……君と巡り会えた奇跡と、君と共に生きていける奇跡を喜びたい」

 リリアナが真剣な顔をしてうなずく。
 ファリエルは改めてリリアナの前に片膝を突くと、顔を綻ばせながら手を差し伸べた。


「リリアナ。心から君を愛している。生涯を共にしてくれないか」
「はい、ファリエルさん……!」


 涙目のリリアナが手を乗せてくる。ファリエルはすぐに立ち上がると愛しの人を強く抱き締めた。力の加減ができなくて、地面から浮かせてしまう。
 その場でくるりと一回転すれば、「わわっ」と驚きの声に続けて「あはは」と楽しげな声を出す。
 弾ける笑顔の眩しさに、抱き締める腕に自然と力がこもる。


 今度はリリアナの方からぎゅっと抱き付いてきて、胸に頬ずりしてきた。
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