傷ついた王子は森の魔女に癒される
 いきなり望んでもいない側妃にされた母。
 それでも国王への恨みつらみは、息子であるファリエルの前では一度も口にしなかった。
 そのせいで、ファリエルは父親である国王とは温かな思い出ばかりだった。
 両親のおぞましいなれそめを知ったあとも、はっきりと父を憎み切れないのはそのせいだ。


 ファリエルが沈んだ気持ちになった横で、リリアナが別の薬を棚から持ってくる。

「そしたら私は……思い切り髪を短くしてみようかな」

 薄黄色のクリームを、胸のあたりまでの長さの髪にすり込む。
 ミルクティー色の髪は淡い緑色に変わり、すぐに耳が見えるほどに短くなった。

 既に短くなっている髪を耳に掛ける仕草をしながら、自信のなさそうな顔をする。

「どう……でしょうか。変じゃないですかね」
「変なものか! とてもよく似合っている」
「ありがとうございます」

 ぽっと頬を赤らめて、照れくさそうに笑う。

「実は性別そのものを変えられる薬もあるんですけど、かなり身体に負担がかかるんですよね。なので、街へ出るときはこうして気軽に見た目を変えられる薬を使ってるんです。これだけでも、結構男の子っぽく見せられるので」
「なるほどな」

 確かにリリアナの言う通り、やや幼げな顔つきのせいもあって、さっぱりとした髪型は少年と青年の間くらいに見えた。
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