傷ついた王子は森の魔女に癒される
 アクアブルーの瞳が絶望に染まる。

「ファリエルさん……。あなたはまさか、私が子供のとき(・・・・・)に、うちに来た王子様なのですか!?」
「君が……、先日(・・)の少女だったのか……?」


 僕は心のどこかで、秘薬を求めて訪ねた魔女がリリアナだったことに気づいていたのかもしれない。
 だから、いつしかリリアナの子供の頃を想像したときに心臓が騒いだのか――。


 顔が真っ白になったリリアナが、足をよろめかせる。
 大きな音を立ててドアに背をぶつける。

「どうして、あなた、まだ生きて……。もうとっくにお亡くなりになったかと思ったのに……」
「だが君も……ついこの間(・・・・・)会ったとき、君は少女ではなかったか? 魔女はほんの数週間で、そこまで育つのか?」
「――!」

 リリアナが、びくっと肩を跳ねさせた。
 両手を腹の前でぎゅっと握り合わせて、そっとうなだれる。

「どうして……? でも、そういうこと(・・・・・・)、なんですね……」

 小声でつぶやいたリリアナが、ドアから静かに身体を起こした。
 アクアブルーの目を細めて、力なくファリエルを見つめる。

「あなたがここに来たのは、125年前です。あれから百年以上、経ってるんです」
「百年以上!? そんなまさか……!」


 125年――。
 あり得ない。信じられない。まったく記憶にない。


 もし本当にそんなにも長い時間が経っているとして。
 僕は一体、どこでどう過ごしていたんだろう。
 それに、百年経った祖国は今、一体どうなってしまったのだろう――。
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