傷ついた王子は森の魔女に癒される
 疑問が頭の中で積み上がっていく。
 それはリリアナも同じようだった。

「でもどうして、私はあなたを過去から召喚してしまったのでしょうか……。ファリエルさん、私が召喚する直前の記憶ってありますか?」
「それは……!」

 記憶がないはずがない。
 拘束されて、処刑台に連れ出されて。
 民の怒号の中、剣が振りかざされて――。

「っ……!」

 死を覚悟した瞬間が脳裏によみがえる。
 一瞬にして目の前が暗くなった。


 速くなった鼓動が視界を揺さぶり続けている。
 ファリエルが黙り込んでいると、リリアナが切なげに眉根を寄せた。

「もしかして……、話したくない(・・・・・・)ようなこと(・・・・・)があったのですか?」
「……」

 処刑に至るきっかけは、魔女の秘薬とお守り。
 ただ、それらはあくまできっかけ(・・・・)に過ぎない――そう断言できる。
 それでも、経緯を正直に伝えたらリリアナは確実に傷つくだろう。

 互いに様子をうかがったり、目をそらしたり。沈黙の時間が続く。
 森の木々が、強風にざわめき出す。



 ファリエルが無言でうつむいていると、リリアナの方から話しかけてきた。

「あなたが私を訪ねてきたとき、こう言ってましたよね。『僕はボナマハト王国の第二王子だ』って」
「――!」
「お名前だって、もちろん憶えてましたよ。『ファリエル・ボナマハト』……。召喚直後にファリエルさんからお名前を聞いて、あのときの(・・・・・)王子様(・・・)と同じ名前だなってずっと思ってましたけど……。苗字は言ってなかったし、きっと別人だろうなって、そう思い込んでました」
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