傷ついた王子は森の魔女に癒される
 確かにリリアナに名乗ったときは、彼女を自分の事情に巻き込みたくなくて、苗字を伏せていた。
 結局、巻き込んでしまった――。
 自分の不甲斐なさにうなだれる。


 また、互いに黙り込む。
 何を言えばいいのか。何を思えばいいのかわからない。


 強風に肌が冷えきった頃。
 リリアナが、ぽつりと問いかけてきた。

「ファリエルさん。確かめに……行ってみますか? 貴方の故郷を」
「……!」

 百年以上経過した祖国。
 きっと、何もかもが変わってしまっているだろうけれど。

「……。ああ、君も一緒に来てもらえるなら心強い」

 アクアブルーの瞳をまっすぐに見て、静かにうなずいてみせた。


 本当は、見にいくのが怖い。
 あれから125年も経過した今。
 祖国はどんな道筋を辿ったのだろうか。

 当時、僕は確実に処刑されたのだろうか。
 処刑されたなら、なぜ僕は今、生きているのか。



 じっとファリエルを見つめていたリリアナが、ふと視線を逸らした。
 家の中に駆け込み、鞄を持って出てくる。街とは逆方向に歩き出す。

 黒いローブとミルクティー色の髪が風に揺られている。
 ファリエルは、緊張感に息を呑むと、無言でリリアナのあとを追った。
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