傷ついた王子は森の魔女に癒される
『ああいや、僕ではなく……。僕の婚約者が欲しがっているんだ。『美しくなるための秘薬が欲しい』、『それを飲まないと、僕とはとても並び立てない』と心を病んでしまっていてね』
『あ、そうなのですね……』

 王子様には、婚約者がいる。
 こんなにも素敵な人にお相手がいるのは当然なのに。
 胸がぎゅっと苦しくなった。涙がにじんだ。理由はわからなかった。

 でも私、この人の役に立ちたい。そう強く思いながら薬を調合した。
 絶対に失敗したくない、頼りない魔女だと思われたくない。
 集中しすぎて、一回で成功したか何度も失敗したかはよく憶えていない。でも慌てた覚えがないからきっと成功したんだと思う。

 できあがった薬の瓶をおそるおそる差し出したら、王子様はほっとしながら受け取ってくれた。


 これでもう、王子様は帰ってしまう――。
 それに気づいた瞬間、どうしてもまた会いたいって気持ちでいっぱいになった。
『もう一度会えますように』って祈りながら、お守りを渡してしまった。婚約者がいる人なのに。
 とてもいけないことをしている気がして、王子様の手首にお守りを着けるとき、ずっと手が震えっぱなしだった。何度も失敗して泣きそうになっていたら、『大丈夫、ゆっくりでいい』と言ってくれた。優しい微笑みを浮かべながら――。


 あのときは幼くて、魔女のお守りを人に着けさせたらその人がどんな目に遭うかなんて、想像できなかった。
 私のせいで、あんなにも素敵なあの人は処刑されて。
 しかも百年以上も未来に連れてきてしまった。


 私にはもう、ファリエルさんと一緒にいる資格なんてない――!
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