傷ついた王子は森の魔女に癒される
 結局その晩は、一睡もできなかった。
 それでも頭は冴えていた。リリアナに伝えたいことがあるからだ。
 きっと迷惑を掛けてしまうだろうけれど。
 僕を召喚した責任を取らせるようで、苦しいけれど。

 僕はずっと、ここで君と暮らしていきたい――。

 この気持ちを伝えたら、君はどんな顔をするだろう。
 驚くだろうか。頬を染め、ぽかんと口を開けた表情が目に浮かぶ。


 リリアナが居間に戻って来た。
 ただでさえ色白な顔はますます白くなり、目の下にはくまができていた。
 彼女もまた、眠れなかったのだろう。

 じっと見つめても、視線を返してこない。
 うつむいて、思い詰めた顔をしている。


 そんな顔をさせてしまってすまない。
 それでも僕は――。


 今から伝えようとしている言葉を思い浮かべれば、心臓が早鐘を打ち始める。
 ファリエルは、一度深呼吸すると、意を決して立ち上がった。
 まっすぐにリリアナを見る。


「リリアナ――」
「ファリエルさん」


 ファリエルが呼び掛けたのと同時にリリアナが顔を上げた。
 アクアブルーの瞳が切なげに揺れる。
 今にも泣き出しそうな面持ち。


 ただごとじゃない雰囲気が、想いを伝えることをためらわせる。


 息を呑む。さらに鼓動が加速する。
 ファリエルが黙ってリリアナが話し始めるのを待っていると、リリアナが顔を逸らした。その横顔は、どこか魂が抜けたかのような無気力さが漂っていた。


「……お身体は、もう……回復されましたよね」
「あ、ああ」
「……魔女は、魔女というものは……孤独に生きるものなんです」
「――!」
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