傷ついた王子は森の魔女に癒される
 急いで扉を開け放ち、外へ飛び出す。
 辺りを見回す。人影はもう、どこにも見えない。

「ファリエルさん……!」

 その場にくずおれる。
 抑えていた涙が一気に溢れ出した。
 両手で枯葉ごと土を握りしめる。落ちた涙が染み込んでいく。


「ごめんなさい、ファリエルさん……!」

 
 ――ファリエルさんと過ごす日々が、ずっと続いて欲しいと思っていた。
 私が召喚してしまったんだから、ファリエルさんが『帰りたい』と言わない限りは、いつまでだってこの家でのびのびと暮らして欲しかった。


 でも、私の渡したお守り(・・・)のせいで。
 ファリエルさんは処刑されてしまった。


 召喚した直後に見た、身体中に刻まれた深い傷。
 きっと処刑される前に拷問されたんだ。
 どれほど痛かっただろう。苦しかっただろう。悔しかっただろう。


 胸が押しつぶされる。
 この痛みで死んでしまえたらよかったのに――!


「ごめんなさい、ファリエルさん……! 追い出しちゃって、本当にごめんなさい……!」


 優しい王子様と過ごした日々が、次々と浮かんでは消えていく。
 身体を拭いてあげたときのこと。育ててもらった野菜が大きくなりすぎたこと。
 薬作りに失敗して目が見えなくなったときに、一晩中そばにいてくれたこと。

 ご飯を食べるときはいつも、なんてことない料理をおいしそうに食べてくれた。
『リリアナの手料理は、本当においしいな』って微笑んでくれた。

 ずっとこのまま、ファリエルさんと暮らしていけたら。
 何度そう願ったかわからない。

「でも私、ファリエルさんと一緒にいちゃダメなんだもん。私のせいであんなに傷つけられて、殺されそうになったんだから……! ぜんぶせんぶ、私が悪いんだ……!」
< 81 / 117 >

この作品をシェア

pagetop