傷ついた王子は森の魔女に癒される
 僕は、こんな風にしてリリアナに呼び出されたんだな……。
 当時のことを懐かしく思いながら、召喚の様子を見守る。

 立ちのぼった光が弧を描き、中央に収束していく。光の塊が作られていく。


 楕円形の輝きが、次第にはっきりとした輪郭を描いていき――。


 ウサギによく似た生物が現れた。
 長い両耳が垂れ下がり、目は白く輝いている。

 あれが、精霊――。

 ファリエルが初めて見る精霊の姿をじっと見つめていると、ウサギのような精霊はその場で大きく跳ねて空中で一回転した。
 そのまま小さなジャンプを繰り返し、最後は大きく跳躍して机の上に降り立った。

「久しぶりね」

 コーデリアが精霊に微笑みかけると、精霊は長い耳をひょこっと持ち上げた。
 いかにも小動物らしい仕草にファリエルが少しだけ癒されていると、コーデリアが精霊をなでながら説明を聞かせてきた。

「精霊に力を借りると、作るのが難しい薬も作れるようになるの」

(リリアナも、そう話していたな……)

 耳の中に、リリアナの声が聞こえてきた気がした。
 もう二度と聞くことのできない声に胸を締めつけられる中、薬を作る様子を見守る。
 コーデリアが器に手をかざす。精霊がそこを覗き込む。魔法の輝きが強くなる。
 ひとつの工程を終える度に、『ありがとう』と精霊に微笑みかけている。
 優しげな笑顔は、初めて会ったときの怒りの形相からは想像も付かないほどに穏やかだった。
< 88 / 117 >

この作品をシェア

pagetop