傷ついた王子は森の魔女に癒される
(彼女も兄とのいざこざがなければきっと、リリアナのように優しい人なんだろうな……)

 ガラス瓶を満たす液体が、ひときわ強く輝き出した。
 部屋全体を照らす光のまぶしさに思わず目を閉じる。
 薄目を開けて様子を窺うと、魔法の光は少しずつ弱まっていき、瓶の中に収束していった。

 コーデリアが、顔の前に掲げた瓶を軽く揺らす。
 口元を綻ばせて、小さくうなずく。

「うまくできたわ、ありがとう」と精霊の頭をなでる。ウサギ型の精霊は、気持ちよさそうに目を細めた。

 彼女が作っている薬が記憶を消す薬(・・・・・・)でなければ、心温まる光景に見えただろうに――。



 コーデリアが薬の入ったガラス瓶にコルク栓で蓋をしながら精霊に問いかける。

「そういえばあなた、この人間のこと知ってる?」

 と、顎でファリエルを指した。
 精霊が机の上で小さく跳ねて振り返る。白く輝く目でファリエルをじっと見つめてくる。吸い込まれるような眼差しに緊張感が走る。
 ファリエルが固唾を呑んで精霊の反応を待っていると、コーデリアが説明を付け足した。

「リリアナが精霊召喚をしようとしたら、こいつを召喚してしまったんですって。どうしてリリアナがこの人間を召喚できたかわかる?」

 精霊が、もう一度ファリエルを見る。
 何度かまばたきを繰り返したあと――はっきりとうなずいた。
< 89 / 117 >

この作品をシェア

pagetop