傷ついた王子は森の魔女に癒される
 ――君が処刑された瞬間、あの子のお守りが君を守り、君は精霊界に飛ばされた。君は長きにわたり、僕らの住む精霊界で眠り続けていた。

 人間が精霊界に来るなんて前代未聞だったから、僕らは君の扱いに困ってしまったけれど。精霊王が『そっとしておいてやれ』とおっしゃったから、僕らもただ眠る君を観察するだけにとどめておいた。

 君が眠り続けている間、あの子はずっと、君の幸せを祈り続けていた。
 人間の寿命の年数が過ぎる頃には、君が生まれ変わっても幸せであり続けるようにと祈っていたね。だからこそ、君は百年以上、精霊界で精神と肉体を保っていられたんだ。


「……!」

 リリアナはずっと、僕のことを想い続けてくれていた。
 たった一度会っただけの僕に――。


 精霊の声が、また頭の中に響き渡る。

 ――そして君もまた、牢の中で、彼女のお守りに祈りを捧げていたね。『きっとこのお守りが、僕を守ってくれる』って。
 だからあの子が精霊を召喚しようとしたときに、あの子の願いと君の願いが繋がって、精霊界にいた君が召喚されたんだ。


「っ……!」

 衝撃的な事実を知らされて、ファリエルは目の奥が熱くなった。

「っ、ううっ、リリアナ、リリアナ……!」

 両手で顔を覆いかくす。手のひらに涙が溜まっていく。嗚咽を抑えられない。
 母が死んだときでさえ、ここまではっきりと泣いたことはなかった。
 心優しき魔女との温かな思い出が、心安らぐ日々が、浮かんでは消えていく。


 リリアナ。今すぐ君に会いたい。
 君は僕を拒絶したけれど、僕は君のことを――。
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