傷ついた王子は森の魔女に癒される
「これ、遅効性(・・・)にしたから」
「遅効性?」
「そうよ。飲んでもすぐには効果が発動しないってこと。だから今すぐ飲みなさい」

 さっさと受け取れと言わんばかりに手の中に瓶を押し付けられる。
 薬瓶を受け取った瞬間、どくんと心臓が跳ねた。

 嫌だ。これを飲んだら、いずれ必ずリリアナを忘れてしまう。
 そんなのは嫌だ――!
 口から出かかった言葉をぐっと飲み込み、深呼吸して冷静さを装う。
 しかし手の震えはどうしようもなかった。コルク栓をうまくつかめない。コーデリアが赤い視線を突き刺してくる。
 無理やり指先に力を込めて、ようやく栓を外せた。

 瓶の口を唇に押し当てる。耳の中で、警鐘のように鼓動が鳴り響く。
 そこから瓶を持ち上げられない。荒れた呼吸がかすかに瓶を鳴らす。


 リリアナ。君を忘れてしまうことを、どうか許してくれ――!


 胸の内で大切な人へと呼びかけてから、ファリエルは記憶を消す薬(・・・・・・)を一気に飲み干した。

 鉛を飲み込んだかのように胃が重くなる。
 視界が色褪せ、激しく脈打つ心臓の音まで遠くなった気がした。
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