傷ついた王子は森の魔女に癒される
 ――彼女が僕を信用できない気持ちは理解できる。でもどうしても、リリアナに会えないまま死にたくない。

「どうすれば、貴女に信用してもらえるだろうか」
「笑わせないで。あの男(・・・)の弟ってだけで無理よ」
「……」

 僕は異母兄(あに)とは違う――口から出掛かった言葉を呑み込む。
 かたくなになった相手を説得するのは難しい。ならばと力ずくで太刀打ちしようとしても、圧倒的な力の差があるのは以前見せつけられた魔法の強大さでもうわかっている。それでも諦めたくない。

「では……同行してもらえないだろうか。リリアナの元へ」

 厚かましさを承知で問いかける。この無理筋な要望が断られたら次は――と思い巡らせていると、コーデリアが机に向き直った。

「待ってなさい」

 思いもよらない反応に驚いたファリエルは、固唾を呑んで成り行きを見守った。
 ――まさか本当に、一緒にリリアナの元へと行ってくれるのか?

 コーデリアは、液体の入った小瓶に手をかざしていた。
 真剣な横顔。瓶の周りが光り出す。


 しばらくしたのち、魔法の輝きが、ふっと消え去る。
 一体なにをしたのだろう。
 ファリエルが尋ねようとした矢先、コーデリアが今度は卓上の棚からガラスの球体を手に取り、両手で包み込んだ。
 魔法の光がきらきらと弾けたかと思えば、ガラス玉の中に青い火が灯る。

「……綺麗なものだな……」

 緊張していたことも忘れて、揺らめく青色の炎に思わず見入ってしまう。周囲を照らす涼しげな色は、氷を透かし見たかのように美しかった。
 コーデリアが「呑気なものね」と不機嫌そうにつぶやく。
 冷めた目をしてガラスの玉を机の上に置き、ファリエルに薬の瓶を差し出してきた。
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