傷ついた王子は森の魔女に癒される
 焦りと苛立ちを覚えながら剣の柄に手をやる。

 今度は倒せるだろうか。いや、倒してみせる。リリアナの欲しがっていた魔石を手に入れて、彼女を忘れる前に渡したい。
 と思い巡らせながら体勢を低くした途端。

 ガラス玉の中の炎が激しく燃え出した。
 びくりと魔獣が身体を震わせる。
 あたり一面を照らす青い光が、炎の動きに合わせて揺らめく。
 真っ黒な獣は異様な明るさに驚いたのか、まるで子犬のように高く弱々しい鳴き声を洩らすと、そそくさと逃げ去っていった。


 思いもよらない状況に唖然とする。
 ふわふわと戻ってきたガラス玉は、炎が元の大きさに戻っていた。

 魔物避けの効果があるのか?
 剣を収めながら、青い炎を見つめた瞬間。

「うっ……!」

 きん、と高い音が頭の中に響いた。
 こめかみを押さえて目をきつく閉じる。
 突然、聞き覚えのある気がする声が頭に溢れ出した。次々と聞こえてくる声はどれも早口でまったく聞き取れない。

 不意に、頭の中が闇に塗りつぶされた。
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