傷ついた王子は森の魔女に癒される
 そっと目を開く。視界中に広がるのは、夜闇と背の高い木々。

「……ここは……?」

 周囲を見回す。森の中のようだ。


 なぜ僕は(・・・・)こんなところに(・・・・・・・)いるんだ(・・・・)


 突然の出来事に心臓が早鐘を打ち始める。
 誰かいないのか? 夜の森の静けさが耳に刺さり、背筋に震えが走る。肩で息をしながら必死に状況把握しようとする。
 あたりの気配を探る。従者たちの姿はどこにも見当たらない。
 はぐれてしまったのか? でも兵たちが僕から見えない位置まで展開するなど考えられない。なぜ、どうして――。

 と思い巡らすうちに、ふとこれまでの記憶が浮かびあがってきた。

「ああ、そうだ。僕は、彼女(・・)に会いたくて……」

 宙に浮いたガラス玉に歩み寄る。
 中に燃える炎は、少しだけ小さくなっている気がした。

 本当に僕は、リリアナのことを忘れてしまうんだな……。
 今のはもしかしたら、薬が徐々に効き始めている証拠なのかもしれない。
 急いで会いに行かないと――!




 空が白み始めた頃になって、遠くに見覚えのある建物が見えてきた。
 きっとまだリリアナは眠っているだろう。
 足音を立てないように注意しながら少しずつ近付いていく。

 家全体を見渡せる場所で、ファリエルは立ち止まった。
 早く君に会いたい。でも眠りを妨げるわけにはいかない。
 ようやく久しぶりにゆっくりとベッドで休めて、ぐっすり眠っているのだろう。ずっと僕がベッドを占有してしまっていたのだから。

 と思いながら改めて家を見た途端、カーテンが開いていることに気づいた。
 夜は確か、カーテンを閉めていたはず。こんな朝早くに起きているのか?
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