キスしない約束の恋
第7話 触れられない理由
――神崎くん。
昼休み。
気づけば、探していた。
理由なんて、ないはずなのに。
教室にはいない。
屋上にも、階段にもいない。
「……どこ」
廊下を歩きながら、小さく呟く。
そのとき。
――かすかに、声が聞こえた。
奥の、使われていない空き教室の方。
笑い声。
低い声。
足が、止まる。
でも。
なぜか。
引き寄せられるみたいに、近づいてしまった。
扉が、少しだけ開いている。
――見てはいけない。
そう思ったのに。
視線が、そこに吸い寄せられた。
そして。
「……っ」
息が、止まる。
そこにいたのは。
神崎くんと。
――綺麗な人。
見たことがある。
学校で一番って言われてる、先輩。
距離が、近い。
近すぎる。
触れている。
見たくないのに。
目が、離れない。
笑っている。
いつもの、軽い顔で。
――やっぱり。
そういう人。
わかってたのに。
胸が、痛い。
ショック。
でも、それ以上に。
――軽蔑。
「……最低」
小さく、呟いた。
そのまま、後ずさる。
ここにいたくない。
見たくない。
関わりたくない。
――ガンッ
何かに、ぶつかった。
大きな音が、廊下に響く。
「……誰?」
中から声。
「……っ」
終わった。
足音が近づく。
逃げられない。
扉が開く。
「……シロ?」
神崎くんだった。
その後ろで。
先輩が、ゆっくりとこちらを見る。
「知り合い?」
少しだけ笑っている。
「……いや」
短く答える。
「ちょっと待ってて」
そう言って。
先輩は、くるっと背を向けた。
「じゃあ、あとでね」
意味ありげな視線を残して。
その場を離れていく。
廊下に、ふたりきり。
「……見た?」
低い声。
「……見てません」
反射的に答える。
「嘘」
一歩、近づかれる。
逃げたい。
でも、足が動かない。
「なんで来た」
「……別に」
「探してた?」
「違います」
否定する。
でも。
視線が、逸らせない。
「……そっか」
少しだけ、笑う。
そのまま。
ぐっと距離を詰められる。
「……っ」
近い。
逃げられない。
手が、伸びる。
肩に触れられる。
「やめて……」
声が震える。
怖い。
さっきの光景が、頭に浮かぶ。
同じことを、される。
そう思った瞬間。
涙が、こぼれた。
「……っ」
止まらない。
怖い。
嫌だ。
そのとき。
ぴたり、と。
動きが止まった。
「……は?」
神崎くんの声。
さっきまでとは、違う。
「……なんで泣いてんの」
戸惑った声。
そのまま。
ゆっくりと、手が離れる。
「……ごめん」
小さく、呟いた。
「……っ」
涙が止まらない。
「……無理だ」
ぽつりと。
「お前には、できねぇ」
誰に言うでもなく。
「なんでだよ」
自分に問いかけるみたいに。
「いつもなら……」
途中で、言葉を止める。
そして。
もう一度、私を見る。
「……やめる」
はっきりと。
「お前のことは、大切にしたいから」
「……何もしねえ」
その言葉に。
涙が、止まる。
わからない。
さっきまで、軽蔑していたはずなのに。
なのに。
胸が、痛い。
――その様子を。
少し離れた場所から。
先輩が、見ていた。
静かに。
でも、確実に。
表情を歪めながら。
――放課後。
「ねえ」
帰ろうとしたとき。
声をかけられる。
振り向くと。
昼の先輩だった。
「ちょっといい?」
逃げられない。
「……はい」
「さっきの見たでしょ」
「……」
「まあいいや」
くすっと笑う。
「教えてあげる」
「……何を」
「神崎くんのこと」
胸が、ざわつく。
「全部、遊びだから」
「……」
「何人いると思う?」
「……」
「本気になったこと、一回もないよ」
淡々と。
「あなたも、その一人」
「……違います」
思わず、否定する。
「違う?」
くすっと笑う。
「じゃあ、なんであんなことされたの?」
「……っ」
「興味持つわけないじゃん」
冷たい声。
「あなたみたいなのに」
胸に、刺さる。
「そのうち、飽きられるよ」
言い切って。
「だから、勘違いしない方がいい」
そのまま、去っていく。
ひとり、残される。
「……」
何も言えない。
でも。
胸の中で。
何かが、揺れていた。
――軽蔑しているはずなのに。
どうして。
こんなに、苦しいのか。
わからなかった。
ただ。
もう。
前の気持ちには、戻れないことだけは。
はっきりと、わかっていた。
昼休み。
気づけば、探していた。
理由なんて、ないはずなのに。
教室にはいない。
屋上にも、階段にもいない。
「……どこ」
廊下を歩きながら、小さく呟く。
そのとき。
――かすかに、声が聞こえた。
奥の、使われていない空き教室の方。
笑い声。
低い声。
足が、止まる。
でも。
なぜか。
引き寄せられるみたいに、近づいてしまった。
扉が、少しだけ開いている。
――見てはいけない。
そう思ったのに。
視線が、そこに吸い寄せられた。
そして。
「……っ」
息が、止まる。
そこにいたのは。
神崎くんと。
――綺麗な人。
見たことがある。
学校で一番って言われてる、先輩。
距離が、近い。
近すぎる。
触れている。
見たくないのに。
目が、離れない。
笑っている。
いつもの、軽い顔で。
――やっぱり。
そういう人。
わかってたのに。
胸が、痛い。
ショック。
でも、それ以上に。
――軽蔑。
「……最低」
小さく、呟いた。
そのまま、後ずさる。
ここにいたくない。
見たくない。
関わりたくない。
――ガンッ
何かに、ぶつかった。
大きな音が、廊下に響く。
「……誰?」
中から声。
「……っ」
終わった。
足音が近づく。
逃げられない。
扉が開く。
「……シロ?」
神崎くんだった。
その後ろで。
先輩が、ゆっくりとこちらを見る。
「知り合い?」
少しだけ笑っている。
「……いや」
短く答える。
「ちょっと待ってて」
そう言って。
先輩は、くるっと背を向けた。
「じゃあ、あとでね」
意味ありげな視線を残して。
その場を離れていく。
廊下に、ふたりきり。
「……見た?」
低い声。
「……見てません」
反射的に答える。
「嘘」
一歩、近づかれる。
逃げたい。
でも、足が動かない。
「なんで来た」
「……別に」
「探してた?」
「違います」
否定する。
でも。
視線が、逸らせない。
「……そっか」
少しだけ、笑う。
そのまま。
ぐっと距離を詰められる。
「……っ」
近い。
逃げられない。
手が、伸びる。
肩に触れられる。
「やめて……」
声が震える。
怖い。
さっきの光景が、頭に浮かぶ。
同じことを、される。
そう思った瞬間。
涙が、こぼれた。
「……っ」
止まらない。
怖い。
嫌だ。
そのとき。
ぴたり、と。
動きが止まった。
「……は?」
神崎くんの声。
さっきまでとは、違う。
「……なんで泣いてんの」
戸惑った声。
そのまま。
ゆっくりと、手が離れる。
「……ごめん」
小さく、呟いた。
「……っ」
涙が止まらない。
「……無理だ」
ぽつりと。
「お前には、できねぇ」
誰に言うでもなく。
「なんでだよ」
自分に問いかけるみたいに。
「いつもなら……」
途中で、言葉を止める。
そして。
もう一度、私を見る。
「……やめる」
はっきりと。
「お前のことは、大切にしたいから」
「……何もしねえ」
その言葉に。
涙が、止まる。
わからない。
さっきまで、軽蔑していたはずなのに。
なのに。
胸が、痛い。
――その様子を。
少し離れた場所から。
先輩が、見ていた。
静かに。
でも、確実に。
表情を歪めながら。
――放課後。
「ねえ」
帰ろうとしたとき。
声をかけられる。
振り向くと。
昼の先輩だった。
「ちょっといい?」
逃げられない。
「……はい」
「さっきの見たでしょ」
「……」
「まあいいや」
くすっと笑う。
「教えてあげる」
「……何を」
「神崎くんのこと」
胸が、ざわつく。
「全部、遊びだから」
「……」
「何人いると思う?」
「……」
「本気になったこと、一回もないよ」
淡々と。
「あなたも、その一人」
「……違います」
思わず、否定する。
「違う?」
くすっと笑う。
「じゃあ、なんであんなことされたの?」
「……っ」
「興味持つわけないじゃん」
冷たい声。
「あなたみたいなのに」
胸に、刺さる。
「そのうち、飽きられるよ」
言い切って。
「だから、勘違いしない方がいい」
そのまま、去っていく。
ひとり、残される。
「……」
何も言えない。
でも。
胸の中で。
何かが、揺れていた。
――軽蔑しているはずなのに。
どうして。
こんなに、苦しいのか。
わからなかった。
ただ。
もう。
前の気持ちには、戻れないことだけは。
はっきりと、わかっていた。