嘘つきな患者と、私の先生。

恋人

目が覚めると、眩しい天井と冷たいシーツ。


まだ体は少しだるく、胸の奥がざわついている。


点滴のチューブが腕にぶら下がり、鼻には酸素マスクが当たっているのに気づく。


無意識に手を伸ばして外そうとするけれど、すぐに誰かの気配が近づく。



「菜月……まだ点滴と酸素は外さないで」



声の主は世那。


低く、でも少し怒ったような響き。


その瞬間、胸の奥がきゅっと締め付けられる。


「……だって……」

言いかけるが、言葉にならない。


まだ体が自由に動かせないことがもどかしい。



世那は眉を少しひそめ、腕を組んでいる。


いつもより少しだけ厳しい視線。



「……昨日、どうして抜け出したんだ?」



胸の奥がぎゅっと締め付けられる。


まだ発作の余韻で体は震え、言葉が詰まる。



「……喉が……乾いてて……売店に……」



声はかすれ、小さく震えている。


「すぐ戻るつもりだったの……」



世那は黙って聞き、じっと菜月を見下ろす。


そしてゆっくり、低く、でも確かな口調で言う。


世那は一歩近づき、目をそらさずにじっと菜月を見つめる。



「……菜月、無茶するなよ」



その声に、胸の奥がぎゅっと締め付けられる。


体がまだ震えているのに、言葉だけでさらに心臓が早くなる。



「……心配したんだぞ。お前……昨日、死ぬかと思ったんだからな……」



小さく息を吸い込み、世那は肩を震わせる。


「……俺の心臓が、止まるかと思った……本当に……」



菜月はシーツをぎゅっと握り、目を伏せる。


「……ごめんなさい……」


声はかすれ、震えている。




「本当に、すぐ戻るつもりだったの……」




世那は深く息をつき、ゆっくりと首を振る。



「戻るつもりだったとしても、無茶したら意味がないだろ……」




少し間を置き、低く、でも少し震えた声で言う。




「……もう、俺がどれだけお前を心配してるか、わかるか?」




菜月は視線をそらし、胸の奥がさらにぎゅっとなる。


昨日の発作の恐怖、世那に迷惑をかけた申し訳なさ、そして自分の無力さが一気に押し寄せる。



「……無理しないでくれ……頼む……」



世那の声に、涙がにじむ。


自分の心臓まで巻き込まれそうなほど、菜月の無茶に心を痛めているのが伝わる。



菜月は小さくうなずき、やっと震える手をシーツに押し当てる。



「……ごめん⋯な、さい…」


「この前の話おぼえてる?」



「⋯⋯⋯⋯」



「俺ん家に来ないかって、、」



世那は膝をつき、菜月の目線に合わせる。



「昨日みたいに発作が出ても、病院だとパニックになったら制御できないだろ。俺の家ならなんかあった時すぐ対処できる」



「迷惑だし、私一人でも大丈夫、おうちに帰りたい」



「菜月はすぐ無理するから、なんかあっても隠すだろ、、?」



「なんでそこまで私に構うの、、ほっとけばいいのに」
「めんどくさいでしょ?わたし」



菜月はまだ少し震える手を握りしめ、視線をそらす。



世那は少し間を置き、低く、でもはっきりと答える。



「……菜月のことが、好きだからだよ。
好きじゃなかったら、こんなことしない」



菜月の胸がぎゅっとなる。


言葉に出さなくても、昨日の発作の恐怖と世那の心配が、一気に思い出される。



「え、、」



声が小さく震え、胸の奥がじんわり熱くなる。



世那はそっと、でも真剣な目で菜月を見つめる。



「だから、家に来てほしい。無理して病院で隠さないで……俺がすぐ助けられるところで」



菜月の胸がぎゅっとなる。



声が小さく震え、胸の奥がじんわり熱くなる。


そして、知らず涙がこぼれる。



菜月は泣きながら小さく首を振り、言葉にならない。



「そんなに……俺ん家、いやだったのか……?」



世那は少し焦ったように首をかしげる。


「いや……違う……ただ……うれしくて…」




泣きながらも、菜月は震える声で答える。



「……私も……先生のこと、好きです……」




その瞬間、世那の目が少しだけ柔らかくなる。



そして、二人の距離が少し近づいた気がした。
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