藤木部長にロックオン〜あの子のハートビームから逃げられない〜
「くるみ、クリスマスに行きたいところはあるか?」

いつものように仕事のあと、俺のマンションで夕食を食べながら、さり気なく聞いてみた。

「んー、特にないです。あっ、でも……」

でも?と俺は固唾を呑んだ。

実はそう聞いてもくるみは「特にないです」と言うのではないかと思い、俺は早々にホテルとレストランを予約していたのだ。

くるみに「がっついてる」と思われたくはないが、今年のクリスマスイブは土曜日。
ぼやぼやしていては、どこもいっぱいになってしまうと思い、10月のうちにとりあえず押さえておいた。

だが意外にも、くるみからリクエストがあるとは。

(どこに行きたいんだ? 今から予約できるのか?)

そう思っていると、くるみは俺ににっこり笑いかけてきた。

「今年のクリスマスは、遥斗さんと一緒に過ごしたいです」
「えっ?」

それがリクエスト?
それだけでいいのか?
ラグジュアリーなホテルのスイートルームに泊まりたい、じゃなくて、俺と一緒に過ごしたいだと?
くーっ!ういやつめ。

「わかった。朝から晩まで俺と一緒だ」
「はい。よかった、遥斗さん最近忙しそうだから、ちょっと心細かったの」
「ごめん。仕事が忙しくて」

本当はジュエリーショップを回って、指輪を探していたからだが……

「ううん、大丈夫。その分、クリスマスはずっと一緒にいてね」
「もちろんだ」

はにかんで頷くくるみに、俺は早くも腕に抱きしめ、結婚しようと口走りそうになる。

(いかん。女の子にとって、プロポーズは一生の思い出。もちろん俺にとっても、たった一度の大舞台。紳士的に、ロマンチックに、夢見心地で酔いしれるような、大切なひとときを作るんだ)

俺は己にそう言い聞かせた。
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