藤木部長にロックオン〜あの子のハートビームから逃げられない〜
「遥斗さん、どこに行くの?」
「ん? 内緒。今日はたっぷりくるみを楽しませてみせるよ」

エンジンをかけながら、俺は気取ってくるみに笑いかける。

行きたいところは特にないと言われ、それならと俺はこの日の為にあれこれ考えていた。

まずは、海沿いのレトロなショッピングモールに行き、大きなクリスマスツリーの前で開かれているクリスマスマーケットを見て回る。

「可愛い雑貨がいっぱい!見て、遥斗さん。ガラス細工のサンタさんとトナカイ。あっ、これもすてき。天使のウィンドチャイム!」

笑顔を弾けさせるくるみに目を細め、俺はくるみが手にしたもの全てをレジに運んだ。

「えっ遥斗さん、これ全部買うの?」
「もちろん」
「だって、明日までしか飾れないのに」
「来年のクリスマスに飾ればいいだろう? 再来年もその次も、俺と一緒に」

そう言うとくるみは、はにかんだ笑みを浮かべて小さく「うん」と頷く。

手を繋いでカフェに向かうと、軽くランチを食べることにした。

「くるみ、あんまりお腹いっぱい食べないで」
「え? どうして?」
「このあと、アフタヌーンティークルーズに乗るから」
「ええ!? それって、船のこと?」
「そう。ほら、前回は足首を痛めてて、あんまり楽しめなかっただろ?」
「わあ、嬉しい!」

早くもわくわくし始めたくるみは、メニューを見て散々迷い、サラダボールをオーダーする。

「デザートも美味しそうだけど、今日は我慢ね」
「ああ。またいつでも食べに来よう」
「はい!」

笑顔のくるみを見ているだけで、これほど幸せな気持ちになれるとは。

俺は人生で初めて、デートを楽しいと感じていた。
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