没落令嬢ですが偵察の一夜をきっかけに皇太子に溺愛されています
耳元で囁かれる。

「おまえも、俺を求めているんだろう」

その言葉に、息が止まる。

(……違う、なんて言えない)

心の奥を見透かされている。

触れられるたびに、忘れようとした想いが蘇る。

その夜も――私は結局、彼を拒むことができなかった。

それから。

アルヴィオン様は、毎晩のように私の元へやって来た。

窓から差し込む夜の気配とともに現れては、当たり前のように私の隣にいる。

「お嬢様、皇太子殿下が……」

侍女が伝えると、ドアの向こうからアルヴィオン様の姿が現れた。

「アルヴィオン様……このように毎晩……」

戸惑いながら問いかけると、彼は静かに笑う。

「愛しい女の元へ通っているだけだ」

さらりと言い切る。
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