没落令嬢ですが偵察の一夜をきっかけに皇太子に溺愛されています
「誰にも、文句は言わせない」

その言葉に、胸が強く揺れる。

強引で、身勝手で――

それなのに、どうしてこんなにも優しいのか。

そっと額に口づけられる。

「……リゼリア」

名前を呼ぶ声が、甘く響く。

(どうして……)

離れなければいけないのに。

終わらせなければいけないのに。

こうしている時間だけは、すべてを忘れてしまう。

「アルヴィオン様……もう、私……」

「いいんだよ。俺も止められない……」

彼の腕の中にいると――

自分が“選ばれている”ような錯覚に陥る。

それが、どれほど危ういことか分かっているのに。

それでも――私は、抗えなかった。

この甘く、熱い時間に。
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