没落令嬢ですが偵察の一夜をきっかけに皇太子に溺愛されています
帰り際――アルヴィオン様は、私の手を取った。

「……早く、子供が欲しい」

その言葉に、胸の奥が強く揺れる。

ただの願いじゃない。

未来まで見据えた、真っ直ぐな想い。

「結婚前に……許されないことです」

かろうじて言葉にする。

すると彼は、少しだけ眉を寄せた。

「だったら、早く君を妃に迎えたい」

迷いのない声だった。

私は思わず、その胸にしがみつく。

「私……こんなに想われて、幸せです」

本音がこぼれる。

すると彼は、少しだけ呆れたように笑った。

「何を言っている。当然だろう」

そのまま、玄関先で引き寄せられる。

唇が重なるたび、離れがたくなる。

「俺は君の想い人だ」

低く、確かめるように。

「君も……俺しかいないはずだ」

その言葉に、涙がにじむ。

「私……」

言葉が続かない。けれど――

「なんとかする」

彼が、はっきりと言った。

「皇太子妃になれるように、全力を尽くす」

その声は、揺るぎなくて。

私はただ、頷くことしかできなかった。
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