没落令嬢ですが偵察の一夜をきっかけに皇太子に溺愛されています
次の瞬間――アルヴィオン様は、私の前に膝をついた。

「皇太子殿下……!」

思わず声が漏れる。

周囲にもざわめきが広がる。

「皇太子、それは早いのでは……」

国王が戸惑いを見せる。

だが、王妃が静かにそれを制した。

「あなた、黙って見ていましょう」

穏やかな声。その言葉に、場は再び静まる。

アルヴィオン様は、私だけを見つめていた。

「本当は……花園とか、そういう場所で言うつもりだった」

小さく笑う。けれど――

その瞳には、確かに涙が滲んでいた。

「夜会で、一緒に踊ってから……」

言葉を紡ぐたびに、想いが溢れていく。

「一度も、君を忘れたことはない」

(……ああ)
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