没落令嬢ですが偵察の一夜をきっかけに皇太子に溺愛されています
アルヴィオン様は、驚いたように目を見開いた後、すぐに強く抱きしめ返してくれた。

「……やっとだ」

その呟きが、耳元で震える。

「君が俺と結婚すると頷いてくれたのは」

長く、苦しくて、それでも手放せなかった想いが――

今、ようやく形になった。

私は彼の胸に顔を埋めながら、静かにその幸せを噛みしめていた。

その後――アルヴィオン様は、私を花園へと連れて行ってくれた。

昼とは違い、夕暮れの光に包まれた庭は、どこか幻想的で。

噴水の水音が、静かに響いている。

「本当は、この噴水の前でプロポーズするつもりだったのにな」

少し照れたように言うその横顔に、思わず笑みがこぼれる。

「うふふ。フライングしましたね」
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