没落令嬢ですが偵察の一夜をきっかけに皇太子に溺愛されています
「待てなかった」

きっぱりとした声。

「君と結婚できると聞いた瞬間、想いが溢れてしまった」

そう言って、そっと抱き寄せられる。

温もりが、ゆっくりと胸に広がる。

「あの日……」

ぽつりと呟く。

思い出すのは、あの夜会。

すべてを失うはずだった夜。

それでも、勇気を出して手を差し出したあの瞬間。

「勇気を出して、アルヴィオン様にダンスを申し込んで……よかった」

小さく笑いながら言うと、彼も頷いた。

「俺もだ」

その一言に、胸が熱くなる。

彼は、ゆっくりと私を見つめた。

「君の震える手を取った時に、感じたんだ」

真剣な眼差し。

逃げ場のないほど、まっすぐに。

「ああ、この人と一緒に生きていくのかもしれないって」

「大袈裟な」
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