没落令嬢ですが偵察の一夜をきっかけに皇太子に溺愛されています
その時――左手に、かすかな重みを感じた。

ふと視線を落とす。

そこには、光を受けてきらめくダイヤの指輪。

「これは……」

思わず息を呑む。

するとアルヴィオン様が、そっと指を絡めた。

「婚約指輪だ」

静かな声。

「代々の王が、王妃へのプロポーズの際に贈ってきたものだ」

(そんな……)

胸が高鳴る。

こんなにも大切なものを、私に。

「そんな大それたものを……私に?」

指先が、わずかに震える。

けれど――

「構うものか」

彼は迷いなく言った。

「俺は未来の国王で、君は未来の王妃だ」

その言葉に、すべてが重なる。

過去も、今も、これからも。

ゆっくりと視線が合う。

逃げ場のないほど、まっすぐに。
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