没落令嬢ですが偵察の一夜をきっかけに皇太子に溺愛されています
本気で分かっていないような顔。

国王は深いため息をついた。

「我が息子は、ついに盛りが付いてしまったかとな」

「否定はしません」

あっさりと返される。

「おまえな……!」

思わず頭を抱える国王。

そのやり取りに、周囲の者たちが苦笑を漏らす。

――その頃。私は、隣の部屋でウェディングドレスに身を包んでいた。

鏡の前に立つ自分の姿は、どこか現実味がない。

(……本当に、結婚するのね)

胸の奥が、じんわりと熱くなる。

だが――先ほどから聞こえてくる会話に、思わず眉をひそめる。

(もう少し……こう、厳かにできないのかしら)

あんな話をされていると思うと、顔が熱くなる。

けれど同時に、どこかおかしくて。

思わず、ふっと笑ってしまう。
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