愛なき契約結婚のはずが、クールな御曹司の激しい独占愛に堕とされる
先日たまたま食堂での撮影現場に遭遇したが、彼女が遼河さんにボディタッチしているのを目撃してしまい、実はモヤモヤしていたのだ。
少し前までの私なら、彼女みたいな一軍の人を契約結婚の相手に選べばいい――なんて思っていたのに。
……こんなの、まるで嫉妬しているみたいだ。
「ねえ、小雪さんと氷室さんの馴れ初めはどんなものだったの? よかったら聞かせて」
遼河さんと小鹿さんが食堂で寄り添っていた場面を回想して悶々としていたら、笛子さんから突然そんな質問が飛んできた。
プロポーズはバレンタインというストーリーだけは決まっているものの、それ以前の設定についてはきちんと詰めていなかったので、軽く狼狽えてしまう。
私は必死で記憶をたどり、遼河さんと初めて接点を持った、あの社長室での出来事を思い出す。
「私たちは、その……私が人事部の仕事で社長にインタビューする機会があって、そこから徐々に親しくなったと言いますか……」
内心冷や汗をかきながら、捏造した馴れ初めを必死で紡ぎ出す。
ふたりに嘘をついている罪悪感もあるけれど、それよりも私と遼河さんの間には馴れ初めなんて最初から存在しないことが、なんだか虚しかった。
好き合って結婚したわけではないのだから、当然なのに。
……馴れ初めなんてどうだっていい。一緒にいられるだけで、幸せに思わなくちゃ。