愛なき契約結婚のはずが、クールな御曹司の激しい独占愛に堕とされる
気が滅入ることばかりなので、思わずため息をつきながら昼休みの廊下を歩く。
あまり食欲がないので、ビルの一階に入っているコンビニで、サンドイッチとゼリー飲料だけを買ってきた。適当にお腹が満たされれればいいや、という投げやりな心境なのだ。
「仲真小雪さん」
人事部のオフィスに戻る直前、女性の声に名前を呼ばれて振り返る。そこにはあまり会いたくなかった同僚、広報部の小鹿さんが立っていた。目が合うと、スタスタとこちらに歩み寄ってくる。
今日は厄日なの……?
胸の内で呟きながらも、ぺこりと頭を下げる。しかし、彼女が私に会いに来る理由がわからない。
「突然ごめんなさい。ちょっとお時間いいかしら?」
「は、はい。なんのお話でしょう?」
「あまり人に聞かれたくないから、とりあえず移動してからでいい?」
彼女はそう言うと、人事部のオフィスとは反対側の方向へと歩いていく。
やがて廊下の突き当たりの手前にある、ミーティングルームのドアを開けた。少人数での会議に使われる、およそ十五平米の部屋だ。
後から入った私がドアを閉めると、小鹿さんは正面に置かれていた長机に腰を預け、腕組みをして私を見据えた。
口元は微笑を浮かべているけれど、目が笑っていない。