愛なき契約結婚のはずが、クールな御曹司の激しい独占愛に堕とされる
「昨日ね。広報部の氷室エクスプレス製作メンバーで、動画の編集作業をしていたの。氷室社長がお住まいになっている、大豪邸を撮影した回よ」
穏やかな話し方だが、敬語が消えていた。動画に出演している時の、明るく華のある小鹿さんとは、まるで別人に思える。
話している内容からも、嫌な予感しかしなかった。
そして、その予感は的中してしまう。
「……まったく、あの豪邸にみすぼらしい鼠が隠れていたとはね」
豪邸に、鼠。やっぱり小鹿さんが私に会いに来た理由って――。
彼女や広報部の撮影スタッフが自宅にやってきた、あの日の記憶が脳裏に蘇る。
鍵のかかるバスルームに隠れていた私の存在は、私と遼河さん以外だと新町さんしか知らないはずなのに……。
「うまく隠れたつもりだったんでしょうけど、あの日、社長のご自宅を一緒に訪れていた同僚のひとりが、家の外観を色々な角度から撮らせてもらっていたの。その時に、北側にある部屋の窓が少しだけ開いていることに気づいたんですって。彼、興味本位で覗いたそうよ」
小鹿さんは、勝ち誇ったようにクスッと笑う。私の指先から、血の気が引いていく感覚がした。