愛なき契約結婚のはずが、クールな御曹司の激しい独占愛に堕とされる

『そこは同じ土俵に上がらなかった小雪の方が大人ってことでいいんじゃない? きっちり評価されるのは難しくても、小雪の働きぶりは重宝されてると思うよ。自身持って』
「……ありがと。やっぱり琉美に話聞いてもらってよかった」
『お礼は氷室社長の隠し撮り写真で手を打とうか』
「あはは、あの人にそんな隙があるわけないよ」

 ひとしきり琉美と笑い合った後、今度は会ってランチでもしようと約束をして電話を切る。

 気持ちがすっきりしたせいか、気の抜けた欠伸が漏れた。

「小雪ー、風呂は?」

 このまま寝てしまいところだったけれど、階下から父に呼び掛けられ、お風呂がまだだったのを思い出す。メイクを落とさずに寝たら、明日の朝の自分に恨まれてしまう。

「今入る」

 大きめの声で返事をすると、もうひと踏ん張りだとベッドから立ち上がる。一階に降りると、父がリビングダイニングのドアからひょこっと顔を出した。

「俺はもう寝るけど、冷凍庫にアイスあるから風呂上がりに食いたきゃ食って」
「ホント? ありがとう」
「あ、でも、ちゃんと髪乾かしてからな。湯冷めしないように」

 まるで小さな子どもを諭すような口調で言われ、クスクス笑ってしまう。

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