愛なき契約結婚のはずが、クールな御曹司の激しい独占愛に堕とされる

「お父さん、私をいくつだと思ってるの?」
「いくつになったって娘は娘なんだよ。じゃ、おやすみ」
「うん、おやすみ」

 こうして父の愛情を感じるたび、まだこの家にいたい気持ちと、早く独り立ちしなければと思う気持ちとが入り乱れる。

 今日はいつもと変わらない様子だったけれど、父に大切な人がいるなら、早めに腹をくくった方がいいよね……。

 でも、『小雪が家を出る時は嫁に行く時』――あの約束は、どうしたらいいんだろう。

 結局答えが出せないまま、二階へ上がっていく父の背中を見送った。


 翌週、私は社長秘書の新町さんにメールを打った。

 彼にも協力してもらった氷室社長のインタビュー、それと撮影した写真を見開きページにまとめた説明会資料を確認してもらうためである。

 私ももちろんチェックしたけれど、あのクールでそっけない社長はどこにもおらず、パーフェクトなしごでき経営者の姿がそこにはあった。

【なにかお気づきの点がございましたら、今週金曜日までにお申し付けください。お忙しいところ恐縮ですが、何卒――】

 自分の席で淡々とキーボードを叩き、無事送信まで済ませたたその時、背後で同僚が雑談する声が聞こえてきた。

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