愛なき契約結婚のはずが、クールな御曹司の激しい独占愛に堕とされる
お酒が入っているのもそうだし、笛子さんからのメッセージを読んで感情的になり、少し先走りすぎたかもしれない。社長の冷静な判断に従った方がよさそうだ。
「すみません。ひとりで突っ走ってしまいました……」
気まずさから俯き、乱れてもいない前髪を整える。
「別に、きみへの評価は変わっていないから安心しろ。俺にとっては、きみの心が向いている先が家族の幸せである方が都合がいいんだ。冷酷なようだが、きみも俺に対してそれくらいのスタンスでいてくれるとありがたい」
そういえば、社長が結婚相手に臨む条件に、彼自身にあまり興味を持っていない――という項目があった。
父を安心させるために結婚を望む私は、そういう意味でちょうどいい相手なのだろう。
「……わかりました。それでは、きちんとしたお返事はまた改めて」
「ああ。いい返事を期待してる。おやすみ」
社長はタクシーに乗り込むと、すぐに車ごと夜の住宅街に消えていく。
私は笛子さんのメッセージカードをリボンの隙間に戻し、一度深呼吸をしてから玄関のドアを開けた。