愛なき契約結婚のはずが、クールな御曹司の激しい独占愛に堕とされる
恋人が実在すると知り、しかも顔まで知ってしまったことで、私の中に元々あった父への罪悪感が一気に膨らんでいく。
父はこんなにも一途なメッセージをくれる女性から愛されているのに、私のせいで前に進めない。以前立ち聞きしてしまった彼女との電話では、『他の男を探した方がいい』とまで言っていた。
あれは、おそらく父の本心ではないのに……。
「氷室社長」
メッセージカードから視線を上げた私は、思わず縋るように彼を見ていた。
「やっぱり父に会っていってくれませんか? ……婚約者として」
社長の瞳に、怪訝そうな色が浮かぶ。それから彼は私が持つカードをそっと奪い、メッセージを覗き込んだ。
少しして、納得したように頷く。
「なるほどな。きみの心境は理解した」
「じゃあさっそく――」
「お父さんに挨拶をするのは構わない。でも、今夜はやめておく」
「えっ……?」
先ほどまでは彼の方がむしろ積極的だったから、まさか断られるとは思わなかった。
「お互い素面じゃないし、そのメッセージのせいで、今のきみは冷静じゃないだろう。勢いで俺をお父さんに紹介してから、やっぱりそんなつもりじゃなかったと手のひらを返されたらたまらないからな」
痛いところを突かれ、私は口を噤んだ。