愛なき契約結婚のはずが、クールな御曹司の激しい独占愛に堕とされる
「そうです。氷室社長の社内人気や私たちの身分格差を考えると、堂々と明かすのはあまり得策ではないかと。私は人事部ですので、結婚後の各種手続きは自分でできますし」
……なるほど。一理ある。
控えめに見える彼女でも、いざ俺との結婚を決めたら図々しくアピールしたがる可能性があるかもと少し心配していたが、杞憂だったようだ。
仲真小雪はどこまでも俺に興味がないし、それゆえに冷静な考え方ができる。
彼女を妻候補として探し出してきたのは新町だが、見る目は確かだったようだ。
「一年……。内密にしておける期間はおそらくそれくらいだろう。俺が氷室自動車グループの副社長になれる人材かどうかを役員に問うのも、ちょうど一年後の役員会だ。無事に俺が副社長に就任したら公表しよう。その後ほとぼりが冷めれば、離婚しても構わない。もっとも、鬼瓦たちに怪しまれないよう慎重に動く必要はあるが。
「わかりました。まずは一年後の役員会まで、社長と近しい方々の前で妻を演じる。それが私のお役目というわけですね」
「話が早くて助かる。それじゃ、弁当を食べながらでいいから、契約書の内容を細かく詰めていこう」
俺はそう言って、蓋をして置いたままだった重箱弁当の蓋を開ける。彼女も対面で同じ動作をし、弁当の豪華さに目を見張っていた。