愛なき契約結婚のはずが、クールな御曹司の激しい独占愛に堕とされる
なんの恨みもない相手を欺いている後ろめたさはあるものの、小雪もそれは承知の上で契約結婚を承諾してくれた。その先に、このまっすぐで愛情深い父親の幸福を願って。
俺自身も、もう少し本気で小雪の人生を預かる覚悟を決めなければ、と思う。
愛がないならないで、せめて彼女が快適に暮らしていけるように。
「お父さん。改めて、小雪さんとの結婚をお許しくださいますか?」
俺はテーブルの横に移動し、畳の上に両手を重ねて頭を下げる。すると、小雪の父親も同じように俺の正面に正座し、深くお辞儀した。
「あなたのような方に愛されて、小雪は幸せ者です。どうか、娘をよろしくお願いします」
顔を上げたお父さんの目尻はかすかに光っていて、胸に迫るものがあった。
自分にも親はもちろんいるし、それなりに大切に育ててもらった。
しかし、絆の深さを小雪とお父さんの間にあるそれと比べたら、きっと太刀打ちできないだろう。
……すごいな。素直に感動を覚えながら、俺はよき婚約者を演じ続けた。
【帰ってきた父が上機嫌だったので、うまく話してくださったんだと想像がつきました。お忙しい中お時間を作ってくださってありがとうございました】
帰宅した後、すぐに小雪からのメッセージが届いた。社内メールのような温度のない文面は、まるで契約妻のお手本のよう。
彼女を選んだ判断はやはり正しかった。