愛なき契約結婚のはずが、クールな御曹司の激しい独占愛に堕とされる
「マカロンの意味なんて、よく知っていたな」
「えっ? あ、あれですか。たまたまネット記事で見たことがあっただけですよ」
「おかげで助かった。とくに報酬はいらないと言うなら、俺が適当に選んだマカロンでも渡そうか。……当たり前だが別に深い意味はないぞ」
あえて付け足さなくとも、賢い彼女ならわかっているはず。
そう思いながらも、なんとなく誤解されたくなくて、わざと冷ややかな声を出した。
「わ、わかっています。契約の内容はちゃんと覚えていますので」
「……そうか。ならいい」
暗い車内は、それきり沈黙に包まれる。
彼女にマカロンをプレゼントする思い付きは悪くないアイデアだと思ったが、自分の余計なひと言でこんな空気になるなら、最初から口にするべきじゃなかっただろうか。
契約結婚の相手に情などいらないのに……。
どうも俺らしくない、面倒な思考に陥っている気がして、ため息をつく。
沈黙をごまかすように車窓から夜景を眺めながら、いつもは煩わしい新町が今はこの場にいてほしい――、なんて無意味なことを考えた。