愛なき契約結婚のはずが、クールな御曹司の激しい独占愛に堕とされる

 小雪はその後も、婚約者の両親に受け入れられてホッとした女性の姿を最後まで完璧に演じていた。

 会社での彼女の仕事ぶりが一定の評価を得ていることはもちろん知っていたが、プライベートでも機転の利く女性らしい。

 見た目よりも逞しい女性なのかもしれないなと、少し酔いの回った頭の中でぼんやり思った。


「今日のきみの働きは素晴らしかった。なにか報酬を用意したいが、欲しいものはないか?」

 小雪にそう尋ねたのは、ホテルの前から出発したばかりのタクシーの車内だ。

 後部座席で隣り合う彼女は、めっそうもないと言わんばかりに顔の前で両手を振る。

「いえ、遼河さんだって私の父の前で話を合わせてくれたんですから、報酬なんていりません」

 そう言われれば、そうか。あの日、小雪からお礼のメッセージが届いた時も自分で【お互い様だ】と言った気がする。

 しかし、今の俺はどうも彼女に借りがあるような気分になっている。

 ホワイトデーの件を母に突っ込まれた時、彼女に助け船を出されたせいだ。

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