愛なき契約結婚のはずが、クールな御曹司の激しい独占愛に堕とされる
……でも、父に大切な人がいるのなら話は変わってくる。
私に結婚の予定があろうがなかろうが、家を出ることを視野に入れた方がいいのかもしれない。
私だってもう大人だし、父が自分の幸せを見つけたのなら、寂しいよりも応援したい気持ちの方が勝つ。
「やばっ。もうこんな時間」
考え事をしながら洗濯物を干していたら、出る時間がぎりぎりになってしまった。
慌ててパンプスに足をねじ込むと、私は家を飛び出した。
勤務先の氷室エナジー本社へは、最寄駅から電車で十五分弱。駅から延びる歩道橋と直接会社のビルが繋がっているので、車を気にせずに歩けて快適だ。
二階のエントランスから中に入り、エレベーターで人事部のある六階へ。
同じフロアには総務部や経理部などの管理部門が集められており、粛々と事務仕事をする社員が多い。
理由はわからないが、私と同じく眼鏡をかけた人の割合が多いのもこのフロアの特徴だ。
いつも通り同僚たちに挨拶をしながら、自分の席につく。
パソコンを立ち上げると軽く指先で眼鏡を押し上げ、『氷室社長インタビューシート』というファイルをクリックした。