元トップアイドル、問題児のイケメン達の雑用係になりました
「そっか」

社長は、あっさりと引いた。

「じゃあ、仕方ないね」

……あれ?

あまりにもあっさりしすぎていて、逆に違和感を覚える。そのまま踵を返そうとした社長が、ふと立ち止まった。

そして。

私の方を振り返る。

「まあ、このままでも別にいいけど」

「……何がですか」

嫌な予感がする。

「君がどうなっても、僕は困らないし」

「……は?」

一瞬、意味が分からなかった。

そして、ちょいちょいっと手でこっちにくるように私に合図を出す。
私は渋々社長と一緒に楽屋の外に出る。

社長は、いつもの軽い笑みのまま続けた。

「ねぇ、活動休止の理由、気にならない?」

「……っ」

心臓が、どくんと大きく鳴る。

「別に、知らなくてもいいならいいよ」

肩をすくめる仕草。でも、その目は笑っていなかった。

「たださ」

一歩、近づいてくる。逃げ場がない。

「今のままだと、“その理由”――そのまま世間に出るけど」

「……なに、それ」

声が、うまく出ない。

「君は何も悪くないって言ったでしょ?」

社長は、あの時と同じことを言う。

「でもね、世間は“事実”なんて見ないよ」

ぞわっと、背筋が冷える。

「一度出ちゃったら、もう止められないからね」

軽い口調のまま、とんでもないことを言う。

「……っ」

言い返せない。何も知らないはずなのに。

それでも――

“何かある”ってことだけは、はっきりと分かった。

「で、どうする?」

社長は、にこっと笑う。

「ここでちょっと手伝うだけで、その辺ちゃんと抑えられるけど」

「……取引、ってことですか」

絞り出すように言う。

「まあ、そんな感じ?」

軽い。あまりにも軽い。

でも――

逃げられない。

「……っ」

悔しい。こんなの、納得できるわけがない。

でも。

ここで拒否したら。

私は――

「……期間は?」

気づけば、そう聞いていた。

「お、いいね」

社長が楽しそうに笑う。

「話が早くて助かるよ」

「最初からそのつもりだったくせに……」

「バレた?」

絶対わざとだ、この人。

「……短期間だけですからね」

睨みつけながら言う。

「はいはい」

軽く返される。

「じゃあ決まりね」

その一言で。

全部が決まった。私たちは楽屋の中に戻る。

「え、えっと……?」

状況についていけてない佐藤さんが、おろおろとこちらを見る。

「……その」

私は深く息を吐いてから、

「短期間だけ、手伝います」

と、言った。その瞬間。

「やったぁ……!」

瀬戸さんが、なぜか一番嬉しそうな声をあげた。

「……なんであんたが喜んでるのよ」

思わずツッコむ。

「だ、だって……!」

「……はぁ」

ほんと、意味わかんない。でも。これも……トップアイドルへと返り咲くための我慢だ。そう自分に言い聞かせる。

――こうして私は。

元トップアイドルから、イケメンだらけのアイドルグループの“雑用係”へと、転落したのだった。
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