元トップアイドル、問題児のイケメン達の雑用係になりました
「いや〜偶然だねぇ」

「絶対嘘でしょ」

私は言う。

「で、なんの用ですか」

「んー?」

社長は楽しそうに室内を見回して、

「せっかくなんでもしてくれるらしいんだし、君、ここで働かせてもらえば?」

と、軽いノリで言った。

「……は?」

場の空気が、一瞬で凍る。

「ちょ、社長!?」

私が声を上げるより先に、佐藤さんが慌てて立ち上がった。

「い、いえいえ!それはさすがに……!」

「いいじゃんいいじゃん。今この子、無職だし」

「無職じゃないですけど!?」

私は一応学生だ。断じて無職ではない。思わず叫んでしまった。

すると社長はにこっと笑って、私のそばに近づいてきた。そして、他の誰にも聞こえないように耳元で囁く。

「だって、“活動休止”でしょ?」

「……っ」

言葉が詰まる。

「ね?時間あるでしょ」

軽い。あまりにも軽い。でも、その言葉は――

さっきと同じくらい、逃げ場がなかった。

……なんなの、この男。私は社長に対する不信感を膨れ上がらせた。

「いや、でも……!」

佐藤さんが困ったように言う。

「人手足りない〜って、佐藤くん嘆いてたじゃん」

社長は勝手に話を進める。

「ちょうどいいでしょ⭐︎」

「よくないです!」

「いいよね?」

「よくないです!!」

「……」

やり取りが一瞬止まる。

「だ、第一私の一存で決められるようなことじゃないですよ!」

佐藤さんは叫ぶ。

だよね。普通そうだよ。普通は誰かの一存で社員の雇用なんて決められるわけがない。…活動休止も同様に
私は社長を睨む。でも、社長はそんなの見えてないというように言葉を続ける。

「じゃあさ、僕が君の芸能事務所、セレーネエンターテイメントの社長に口添えするって言ったら?」

「え?」

「この事務所は僕の事務所に比べて弱小なんだし、大丈夫だよ。僕の言うことなら、断れないよ!」

さらっと一事務所のことをディスりやがったなこいつ。

…そして。

全員の視線が、私に向いた。

「……は?」

なんで私なのよ。

「えっと……」

佐藤さんが恐る恐る口を開く。

「もし、よろしければ……その……短期間だけでも……」

「無理です」

即答した。こんなの、受けるわけがない。

……はずだった。
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