偽王子と、甘い偽恋
 そんなことを考えながらリビングに戻ると、臣くんはソファに座り、じっとこちらを見ていた。


「…臣くん」

「何?」


 私が改まって名前を呼んだのを見て、何かを感じ取ったのか、彼はそう問いかけてくる。


「私、我儘でいてもいいかな」

「何の話?」

「私は、頭もよくないし、人脈もないし、お金も…、臣くんほど持っているわけじゃないけど、でも、臣くんが好きで、幸せにしたいって気持ちはすごくある!」


 突然の宣言に、臣くんは一瞬目を見開いた。だけど、茶化して笑うようなことはせず、真剣な眼差しで続きを待ってくれている。

 もし、臣くんが自分の意志で奥平さんを選ぶというのなら、その時は潔く諦める。

 でも、そうじゃないなら…、もし私を選んでくれるのなら、その想いを全力で受け止めたい。


「だから、もし、奥平さんを好きじゃないなら、私を選んでほしい。会社の為になんて、これっぽっちも役に立たないかもしれないけど、ちゃんと支えれるようには頑張るから」


 私なりの拙い言葉で、精いっぱいの気持ちをぶつける。

 最初は、王子様みたいな理想を追いかけて彼を選んだのかもしれない。

 優しくて、美男子で。でも裏を返せば、性格は最低で。

 喧嘩をして、彼の嫌な部分を知るたびにこんな男、なんて思っていたけれど、完璧じゃない、彼の不器用な本質に触れるたびに、私はどうしようもなくこの人を好きになった。

 もう今さら、他の誰かを好きになることなんて、できっこない。
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