偽王子と、甘い偽恋
 カフェを出た後は、そのまま近くにある商店街に来た。

 そこで食べ歩きをしようと提案した私を、臣くんは呆れた表情で見て笑っていた。


「まだ食うの?」

「ケーキしか食べてないし。まだいけますけど~」


 そう言いながら彼の腕を組んで、見上げて軽く頬を膨らませてみる。

 どうやったら可愛いと思ってもらえるか、どうせならいろいろ試してみようと思ったのだけど、表情に関してはウケが悪いらしい。冷めた目で見下ろされてしまった。


「まあいいけどな。太るだけだし」

「んなぁ!」


 情けない声を出した私を見て、臣くんは楽しそうに笑っている。

 人をからかっている時が一番いい顔をしているのは何なのだろう。この性悪男子が。

 そう思いながらも、組んだ腕は離さず歩き続ける。臣くんもその手を払う様子はない。自然と受け入れてくれているのが、ほんの少し嬉しかったりもする。

 商店街にはゲームセンターやタピオカ店、靴屋に居酒屋と、雑多な店が並んでいる。もし行くなら、ショッピングモールの方が臣くんは楽しかっただろうか。

 そんなことを考えながら、ちらりと彼の顔を盗み見た。

 特に感情の読めない無表情だけれど、横顔すらも格好いい。きっと見た目だけで言えば、今まで出会った男性の中で一番好きだと思う。

 そんなことを考えながら見つめていると、臣くんがふと、またこちらに視線を落とした。


「何見てんだよ」

「格好いいよね。臣くん」

「それはどうも」


 こういうことで素直になったって、彼は言われ慣れているんだった。渋谷さんは振り回してやれなんて言っていたけれど、ちっとも振り回されやしない。

 場慣れしている男の相手をするには、不慣れな私ではあまりに手に余る。
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