初恋が始まるとき。
その日の帰り、夜も遅くなって時刻は既に22時。いつもより遅くなってしまった日に、騒がしい夜の街を通り抜け駅に向かう。
会社から飲み屋街を歩くと多少近くなるのもあって、いつも通りそこを通って駅に向かっていた。
週末の金曜日なこともあって、人はいつもより多く、混雑している。一人で賑やかなところを通ることにほんの少し寂しさを覚えたけれど、今はそんなことよりも早く帰宅したかった。
疲労の中、早歩きで人込みを抜けていくと「飲みすぎだって」と、ふと聞き覚えのある声が聞こえてきた。私にとっては心地良く、テノールの少し低めの声。
聞き間違えない絶対に。
何度も近くで聞いた数少ない男性の声。
間違いなく渋谷さんだ。
その声に引っ張られるように目を向けると、隣にはよく見る可愛らしい女性の本田さん。酔っているのか上機嫌で甘えるような声を発しながら渋谷さんに抱き着いているのを見た。
「ねぇ、まだ飲みに行きましょ~。渋谷さん~。今日は私の歓迎会なんでしょう~?」
周りに営業部の社員はいた。誰も酔った彼女を止めなんかしない。渋谷さんからしたら何でもないワンシーンなのかもしれない。だけれど私からしたらこれからが変わるくらいの大きな出来事で、それを見た瞬間裂けるように胸が痛んだ。
渋谷さんからしたら酔った女性に抱き着かれているだけかもしれないけれど、私は本田さんの気持ちを知っている。きっと完全にアルコールのせいだけではない。
顔は赤く染まっていて渋谷さんの胸元に頬を付けて緊張しているけれど、その中にもほんの少し嬉しそうな表情をしているのが見えていたから。
会社から飲み屋街を歩くと多少近くなるのもあって、いつも通りそこを通って駅に向かっていた。
週末の金曜日なこともあって、人はいつもより多く、混雑している。一人で賑やかなところを通ることにほんの少し寂しさを覚えたけれど、今はそんなことよりも早く帰宅したかった。
疲労の中、早歩きで人込みを抜けていくと「飲みすぎだって」と、ふと聞き覚えのある声が聞こえてきた。私にとっては心地良く、テノールの少し低めの声。
聞き間違えない絶対に。
何度も近くで聞いた数少ない男性の声。
間違いなく渋谷さんだ。
その声に引っ張られるように目を向けると、隣にはよく見る可愛らしい女性の本田さん。酔っているのか上機嫌で甘えるような声を発しながら渋谷さんに抱き着いているのを見た。
「ねぇ、まだ飲みに行きましょ~。渋谷さん~。今日は私の歓迎会なんでしょう~?」
周りに営業部の社員はいた。誰も酔った彼女を止めなんかしない。渋谷さんからしたら何でもないワンシーンなのかもしれない。だけれど私からしたらこれからが変わるくらいの大きな出来事で、それを見た瞬間裂けるように胸が痛んだ。
渋谷さんからしたら酔った女性に抱き着かれているだけかもしれないけれど、私は本田さんの気持ちを知っている。きっと完全にアルコールのせいだけではない。
顔は赤く染まっていて渋谷さんの胸元に頬を付けて緊張しているけれど、その中にもほんの少し嬉しそうな表情をしているのが見えていたから。