初恋が始まるとき。
『休みの日使って過ごしたいと思う子なんて1人しかいないから?』


 私の疑問に優しい声でそう返してくる渋谷さんに、私も無性に会いたくなった。

 どういうつもりなんだと胸ぐら掴んで問いかけてやりたい。ここで遊びのつもりなんて言ってきたら殴っていいんじゃないかと思えてきた。

 だって、必死に諦めようとしたのに諦められなくしたのはこの男だ。責任を取らせなきゃ気が済まない。


「…殴られる覚悟ありますか」

『何でだよ、無いよ』


 私の発言に大笑いする渋谷さん。私も自分の発言がおかしくなってきた挙句、思わず笑い声につられ、一緒に少し笑ってしまう。

 悔しいけど、こんな馬鹿みたいに遠回りしてお互いに両片思いのような期間を過ごしていることが楽しい。相手も私のことが好き?付き合うのかな?って少し期待してしまって、その期待が外れることがずっと怖くて、認めたくなんかなかったけど、渋谷さんの言葉を聞くだけで、楽しいと思えるようになった。

 ときめいて、楽しんで、嫉妬して、悲しくなって、疑って、そんな全ての感情を恋が教えてくれて、総合しても私は今初めて恋をしたいと思えた。

 初恋なんて、誰にもすることなんてないと思っていたのに、した相手はまさかの遊び人で私が嫌悪感を抱くようなタイプ。そんな事実もおかしい。

 そして、そんな男が私を捕まえようと必死になっているなんて、恋って予想外の連続でしかない。全部、渋谷さんが相手だからわかったこと。
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