初恋が始まるとき。
「…いつ会います?」

『今からでも』

「スッピン砂かけばばあって感じなんで無理です」

『笑わせんなって。見たことあるけど、スッピンも可愛いよ』


 そんな発言に思わず「クッ」と短く声を漏らすがなんとか耐える。こんな所で可愛いとか言ってくんな、と思いつつも自分の気を落ち着かせる。


「察してください。大事な時くらいちゃんとして会いたいって言ってるんです」

『分かりづらすぎだろ…』


 そんなツッコミに少し笑いながら、話を続けた。


「夜ご飯でもいいですか。連休は長いですし、今度こそゆっくり予定決めましょう。しゃーなし、私が渋谷さんの予定全て埋めてあげますから」


 今、すごい自分で恥ずかしいことを言っている気がするが、気にしたら負けだ。顔に溜まる熱さえも気にしないようにし、少し緊張しながら渋谷さんの返事を待つ。

 少しの沈黙の後渋谷さんは少し笑って『迎えに行く時間は後で連絡する』と言った。その言葉に「はい」とだけ返事をし、それじゃあと電話を切ろうとすると『それと』と声が聞こえてきて動きは止まる。


『泊まる準備、してきてな。帰す気ないから』


 それだけ言われ返事も待たずして、電話を切られた。

 その発言の後10秒ほど固まり、思わずベッドのマットをドンッと拳で叩き付けた。

 楽しそうで、嬉しそうで、優しい声。なんだあの男、女性慣れしてるくせに少し浮かれてるの激メロい……!

 人生初めての恋に全力で浮かれているのは私のはずなのに、手練なはずの相手も浮かれている様子が伝わってきて思わずクッションを抱きながら「く〜〜〜〜っ!」と声を漏らしながらゴロゴロと体を揺らし悶えた。

 気持ちの整理をしたくて夜にしたのに、これじゃあ気持ちの整理どころじゃない。オシャレに考えることもたくさんあるのに、恋はまともな思考さえも奪ってしまうらしい。

 カムバック、私の冷静な頭。
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