初恋が始まるとき。
「自分で顔面詐欺だと思いません?」


 共に残業している時にそう言うと、渋谷さんは笑っていた。


「むしろ何でそんな自分で最強メンタルで居られるわけ?すげぇな」

「その分死ぬほど努力してますから。愛される王道ヒロインになるために」

「俺からしたら滑稽だわ。その性格で王道ヒロインとか言ってんの?」

「おだまりくださいませ」

「何で俺の後輩って、俺を慕ってくれる奴1人もいないんだろう」


 そんな嘆きを無視してひたすらタイピングを続けていた。

 この時あっさり白状もされた。経理課の佐々木さんにしか興味が無いと。

 佐々木さんは顔が凄く愛らしくて、それでいてクールな女性で、男性に媚びを売ろうと全くしない。ライバルどころか人を蹴落とす事も知らなそうな。

 クールな女性とクズ男の恋愛なんて、どんな恋愛ストーリーなんだと興味をそそられ見たくなった。


「早く告白してくださいよ」

「余計なお世話だよ」


 そんな話をしながら、渋谷さんを追うのは簡単に諦めた。
 王道ヒロインなんて言いながら、本当の恋を知らないのかもしれない。

 漫画の中のヒロインの様に愛されたいからなんて理由で、理想を追い続けているけれどきっと私は恋に恋をしているだけだ。

 この物語の本当のヒロインは佐々木さん、で間違いが無いのかも。


「くっそ~~~~~、絶対ハピエンにしてください!」

「はは、ばばあじじいになるまで見守ってくれるって事?人生のハピエンなんて死ぬまでわかんねぇだろ」

「それはだるいです」

「こっちのセリフだよ。気軽に人を振り回すなよな」


 私の王子さまはどこにいるのか。
 また探しなおしだ。


『王道ヒロインなはずだった』
End.
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